+Black Blood.



■ ■ ■



――寒い、寒い冬の事だった。


雪も降るというわけでもなく、太陽が出るという訳でもなく。


そんな、曇り空だった。



数ヶ月前に軍を脱退した涼――は、早朝に外へ出ると、道端に黒い塊が転がっているのを発見した。


(・・・・・死人?有り得なくもないか・・・)


恐る恐る近付いて見ると、微かに動いている。


(生きてる・・・・・・・・・・男?)


死人じゃないと言う安心が胸を突き、丸まっている身体に手を通す。


(――女。)


取り合えず店に入れようと言う考えで無花果――当時14,5歳を担いだ。



早朝で開店していない店の奥にソファがあり、そこに凭れさせた。


『こいつ仁叉ん所のわんころじゃねえか・・・』


血痕が付いている顔を見ると、見知った顔。

頬を軽く叩くと、薄っすら目を開ける。



『!!!!!!!』


瞬時に目を剥き、どこから隠していたナイフを手に取り涼目掛けて襲い掛かる。


『っ、おっと・・・・・・』

『・・・お前、誰だ!!此処は何処だ?!』


それを腕を掴んで阻止した。



『道端でお前が倒れていたんだ。そんな警戒すんなって。』

涼にとって無花果の第一印象は――警戒心の塊。


『・・・・倒、れていた・・・?』

『うわっ、怪我してんのかよ』

『お前は、誰だ』


血塗れていた肩を触らせず、淡々と語る声。


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