+Black Blood.
ついこの間まで軍人として働いていた涼には無花果の存在は理解できていたが、初対面の無花果にとっては不躾極まりない男だった。
『寒い、』
『あぁ・・・・・・・・わり』
上半身を起こし、繋ぎを着る無花果。
(何てこった・・・、普通に脱いだぞ・・・いや、脱がせたけど、でも。仁叉に何教えられてたんだよ・・・)
仁叉とは同い年、入隊した歳も同じだった完全同期の涼は彼の実態を知っている。
幼少期から軍最強の狗の様な双子が居る存在も知っていた。
仁叉は悪魔みたいな性格で、残忍だ。毎回そう言う雰囲気の仁叉に少し畏れを抱く事もあった。
そして、ハッとしたように無花果が顔を上げた。――いや、今は空羽。
『!仁叉に見つかるっ・・・・!!』
『お前、軍事館から此処まで歩いてきたのか?結構距離ある・・・』
『走ってでもこなきゃ追いつかれるだろ、下っ端の奴らに』
『大丈夫だよ、此処は一応違法武器屋だから、人は来ない』
その言葉に空羽が顔を上げる。
『・・・本当か?』
『本当。』
安堵したように溜め息をつく。
(軍狗って言うからどんな凶暴人間かとおもいきや)
案外普通な――普通ではないかもしれないが――空羽に驚いた。
『なぁ、空羽?』
『なんだ』
『あ、空羽で合ってた。
此処に泊まりたい?』
びくりと反応した。
『・・・・・・・あ、あ。』
『条件飲んでくれたら此処に住まわせてあげようか?』
『!!!!!』
無表情だが、ぱぁ、と顔が明るくなる。