+Black Blood.
〝The United States of America
○○○state
Beauty salon TENMA〟
「俺読めねぇ。」
「下下。日本語通訳書いてある。アメリカ合衆国○○州天馬美容院。聞いた話と同じくアメリカに分社があるってことだな。んで、その分社の社長的存在の人間がアメリカに顔を出せ、と。」
そこで、零が顔を顰めた。
「・・・なんで、分社の方がこっちに来ねぇんだ?普通は本社側に来るだろ」
「そこが、不思議なんだよな。もしかしたらアメリカの分社の方が此処より儲かっているのかもしれねぇし」
がたた、と浴室から騒音がする。
それを聞き、零が急かすように聞いた。
「――で、」
「そう。俺は一回そっちに行こうと思っているんだ。その間、此処は指導者が無人の会社になってしまう。」
「俺がなれってか?んなもん、アメリカに行かなければ良い話だろ」
「もっと、世界を知るには狭い日本から出なきゃいけないと思うんだ。技術だって俺は烈以下だし、我流の技も少ない。もっと俺は世界を知る必要があると思うんだ」
自然と、律の口元が緩んでいるのが分かった零は深い溜め息をつく。
「・・・・・・社長さんよぉ、お前は意外と腕もあるしそのままでも俺はいいと思うぜ?」
「そりゃあ才能に溢れているお前からの意見だろ。本社に行けば嫌でも客が来る。その接客態度だってエステサロンには必要だろ?」
(・・・・・・コイツ何熱くなってんの・・)
更に顔に皺を寄せる零を無視し、煌いた瞳を向ける律。
「・・・・・それで、お前が俺を収容所から無理矢理引き擦り出したのはコレが理由?」
「それもあるとおもう。」
「ふざけるなって。俺は悠々気ままにあそこで一生を終えたかったのに」
「収容所の何処が悠々気ままだよ。烈だって才能はあるはずだ。天才だって言われてたろ」
苛、と零の機嫌は最高潮に悪くなる。
「・・・・・そのテンサイ、やめてくれねぇ?うざったい」