+Black Blood.
「・・・・・聞いてたろ、海外分社の話」
「・・・・・・うん」
「俺は律の邪魔はしたくねぇと思う。勿論協力もしたくねぇけど。」
みるみる内に無花果の眉が寄った。
「・・・それじゃあ、」
「アイツはさ、腕良いんだけど、もっと世界や時代を見たいっつってる。アメリカも良い機会だし、行くと思う。」
「零、」
「あと5日後で最後だな」
逸らしていた視線を零に戻した。
「俺はここに居る事にする」
すり、と添えられていた手にすりつく無花果。
「・・・・・待って・・・・・」
「ん?」
「軍から、零の始末命令が出されているの」
ぽつり、と語り始めた。
―――無花果が仁叉の元に居たときの事。
『・・・・・どうすればいい?無花果。零君をどうしたい?』
無花果を組み敷いたまま、仁叉が真相を求めるかのように尋ねたのを無花果は苦痛の渦の中覚えていた。
『・・・・、ぁ、殺さ、ないで』
『それは無花果が零君の事を好きだから?』
『ち、がう』
束ねた両手に口付けをする仁叉。
『零君の命と引き換えに―――』
―――その後の言葉と、痛覚だけを無花果は覚えていた。