+Black Blood.
17
―――今から数十年前。
それは、一人の政治家から出た発言だった。
“力の無いものは有力な人間につき、それに従うのが自然ではないのか。何故有力な人間が無力な人間と対等なのか?”
それは、遠回しに‘ある事’を言っているようでそれはそれは大層な反感を買って。
一方、正論と言えば正論なその意見に賛成するものも微弱に居た。その微弱な大数の人間は、勿論有力な人間ばかりで、鼠算の様にどんどんその勢力は広がる。
こうして、悪魔の時代は始まった。
不景気よりも酷いものかもしれない。
そこで、たまたま悪時代真っ盛りに生まれた菖蒲は、女を産んで猫可愛がりする両親を政府に殺される。
兄弟も居なく、親戚も自分を受け入れない。
どうすればいいのか、こんなまだまだ子供の女が。
当時14歳だった菖蒲が始めて就いた職。
・・・・路地に溢れかえる死人の中で、対等に溢れかえる娼婦達。
『一般的に割と整った顔立ちだから、他の娼婦よりは儲かるよ、菖蒲ちゃん。』
その中にふらふらと歩いていると、一人の男に出会った。
勿論、ただの勧誘にすぎなかったが、菖蒲がこの世で優しくされた経験など両親以外に居なかった物だったからその男の言葉を飲み込み、娼婦に成り下がった。
そう、始めはあの男の言葉から。
男が言ったとおりに菖蒲は売れたし、他の女よりは裕福な暮らしが出来た。
そう思ってたのは、16歳までで。