+Black Blood.
「つまり、ここで嫌と言えば零の首が無いんだろ?」
固まったままの妹を抱き上げ、向かい合うようにソファに座る羽牙祢。
「頭良いじゃないお兄ちゃん」
「ほざけ」
ぐ、と羽牙祢の服を掴む手の力が強くなった。
「私はそれでいい。けど兄さんは巻き込みたくない」
「どこをどうなったら人間兵器と謳われてたお前からそんな甘い言葉が出て来るんだよ」
「空、」
真っ直ぐ前を見る空羽に羽牙祢が眉を寄せる。
「俺は、・・・・空羽が望む方で良い。どうせ収容所か犯罪者になるわけだし」
「私的には空羽と羽牙祢どっちも手に置いときたいの。18年間ずっと手放していた訳だから」
ぐぐぐと握った手に、伸びた爪が食い込む。
(軍の狗から逃げた私達が、今度は政府につくの?)
「・・・・・、兄さん、」
迷いがちに見上げた兄は、菖蒲とよく似た顔で苦笑する。
「零ってさぁ、俺らの被害者だろ?」
「菖蒲から聞いたの?」
「まぁ。」
――私も零も、楽になれる方法。