+Black Blood.
□ □ □
政府館にて。
(空羽が来ない)
トイレに言ってくる、と言ったきり戻らない空羽を怪しんだのか、兄――羽牙祢は一度部屋を出てみる。
「空羽?」
埃に塗れた床。
多少其れらしく見える絨毯は殆ど使われていないせいか、穴が見える。
横へと長いその廊下は、目を凝らして見ないと奥が見えない。――無論、視力に悪影響になる行動は全くもってしていない羽牙祢にとっては奥を見るのは容易だが。
「・・・・・・・・・空、」
返事が返ってこない。
更に言えば、廊下の奥に小さく見える小窓。
全開になっており、そこには乗っている筈の埃が無い。
(こんな小窓に体が通るのは空羽しか居ないか・・・・)
やっぱり逃げた、と予想が当たったことに失笑する。
(でもおかしいよな・・・・アイツが逃げたら、零は・・・・)
そこで、気付いた。
零が、
「羽牙祢!!空羽は?!」
と、突然反対側の奥の方から焦ったような龍の声。
――捕獲された時、散々酷い目にしてくれた張本人を見ると自然と不機嫌になる。
「・・・・・ハッ、そう言うことかよ」
焦った様子から見て、羽牙祢は踵を返し部屋に戻った。