+Black Blood.
気付いたら、涼の胸の中で泣いていた。
だから風呂場なのか。泣いても、直ぐに隠せる。
少しだけ、涼に感謝した。
「・・・・・・・・空羽、泣き止んだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ん。」
涼の背中に手を回す空羽。
大分時間が経ったのか、彼の湯から食み出た大きな肩は冷たくなっていた。
「俺、丁度そんとき一緒に暴れててさ。・・・・・・・んで、」
(聞きたくない、そんな最期を語るような話)
咄嗟に涼の口を塞いだのは、自分の口で。
「っ!!あ、これは、手が塞がってたから・・・、つい。別に他意は無い!」
本能的にキスをした事に涙が引っ込み、慌てて言い訳をする。
「・・・・・・アッハッハッハァ!!お前っ、そんな、“つい”でキスしちまう女だったっけかぁ?アッハッハッー!!」
「うるさい!!」
爆笑し始める涼を平手で黙らせ、空羽は不機嫌のまま浴室を飛び出した。
脱衣所の洗面で濡れた顔を洗い、そこでバスタオルに身を包み、気がつく。
「服、」
棚に、あの時の使用人服。
(香織ちゃん用意してくれてたんだ)
丁寧に下着まで置かれていて、隣の男物の服を確認し、空羽は服を着た。