+Black Blood.




「まだ、真っ直ぐになんない」

「そりゃあな。ずっと浸けてれば直るって」

「うえー・・・・・・長風呂嫌い」



触っていた髪を諦めたかのように離し、浴槽の淵に顎を乗せる。



「私、烈、じゃなくて、零、で呼びたい」

「突然なんだよ」

「律が、零のことそう呼んでたから。何かぴんと来ない」



びし、と水面に映った自分の顔を指で弾く。




「・・・・・・まぁ、俺も空羽ってより無花果の方がぴんと来る」

「零がつけた名前だしね」

「結局収容所ん時と変わんねぇじゃん」



零が、可笑しそうに笑った。
それにつられて、無花果も苦笑する。




「もう、このまんまがいいの」

「あ?」

「零がこの会社の社長になって、天馬の名前がデカくなって、忙しくなるのは嫌だし。だけどこのままで、収容所の宗石刑事長が黙って見ている筈も無いし。
だから、先に進みたくない」



半分愚痴るようにして無花果は呟いた。
顔を顰めて、吐き出した溜め息は更に自分の機嫌を傾ける一方で。





「先に進む?俺は進んだ覚えねぇけど」

「うわっ」



ばしゃりと水飛沫が上がる。と同時に無花果の体が持ち上がり、零に抱き上げられた。



「い、いいっ!自分で出れる!!下ろして、」



恥ずかしい、と顔を赤らめ言う。


それを見て零は鼻でせせら笑った。




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