ピンクの落書き
心離
翔太は、堂々とアカネと手を繋いで下校する姿を見せるようになった。
正真正銘の恋人になったらしい。
廊下で琉那が翔太を説得する姿を何度も見た。
だけどその結果は、アカネと翔太の笑顔。
琉那はあれから全く学校に来ていない。
連絡も取れないまま。
音楽室の机に突っ伏しながら、翔太の隣を席を眺める。
前は、席順を無理やり変え琉那が座っていた席。
今は、正しい席順のガリ勉メガネの女が座っている。
夏でも暑苦しいほど腕にくっついて笑顔の琉那が蘇る。
「はぁ~あ…」
「どうした?」
隣の席の颯が心配そうに頭を優しく撫でてくれる。
「琉那のこと…」
心配で心配で。
家に押しかけても、会いたくないと追い出されてしまう。
電話もメールも応じない。
「今は、琉那が落ち着くまで待つしかないよ」
「うん…」
なんか急に不安になり、颯の腕の中に潜り込む。
“浮気”という現実を1番身近な友達が経験した。
でも、颯はそんなことしない。
信じられる。
そこらへんの男とは違うんだ。