ピンクの落書き
無駄に広すぎるピンクと黒に統一されたありすの部屋に入る。
「翼っ!着替えて着替えて。映画観に行こっ!」
鞄をベッドに放り投げ、制服からスエットに着替えるありす。
「映画~?なんの?」
ありすの家に常備置いてある自分のスエットとTシャツに着替えながら話す。
「恋愛小説が映画化になったやつ!」
「あ~。それ、うちも観たいと思ってた」
「行こ行こ!」
財布とケータイを持ち、豪邸を出る。
近くの駅ビルに歩いて向かう。
今、女子の中で話題になっている映画。
原作の小説を読んだありすは、その小説について語りまくっていた。
「あらすじ話しちゃったら、つまんねーよ」
「あ、翼この小説読んでないんだっけ?まじ人生損してるから」
相当この小説が好きらしい。
人生で初めて読み切った本がこの小説だって言ってたっけ。
「そーだ!帰りにこの本を買ってあげるよ」
「どーせ本なんて読まないし」
「読まなきゃダメ!本当にほんとーに人生損だよ!」
すごい目力で顔を近づけてきたありす。
「わかったわかった」
買ってもらえるんなら損はないし。
ありすの頑固さには勝てない。
そんなこんなで目的地に到着。
「きょうも払ってあげんね~」
チケットを買うとき、うちが財布を出す間も与えないほど、サッとかっこよくカードを差し出すありす。
「いいって!」
急いで1000円札をありすの前に出す。