ピンクの落書き
窓から吹き込む風でカーテンが揺れていた。
自分の机に掛けられている補助バックを手に取る。
化粧ポーチとプリ帳しか入っていなくて軽い。
ふと、後ろの颯の席が目に入った。
そっと触れてみる。
……ふざけんな。
颯のやつ。
どんな気持ちでうちが毎日毎日、学校にいたと思ってんの…。
木曜日の音楽の授業も独りで。
誕生日の落書きも知らなくて。
『颯のこと好き?』
そう聞かれたら、即答で『好きじゃない』と言うよ。
本気の恋なんか味わったことないからわからないけど、意地っ張りだけは認める。
なのにね。
頭の中は、颯の笑った顔がいるよ?
今日久しぶりに会って、めちゃくちゃ嬉しさを覚えたよ?
涙だって自然に溢れちゃったよ?
『好きじゃない』と答えるはずなのに…
ふざけんなよ。
颯のばかやろうめ。
せめて、席順変われよ。
うちがお前の後ろに座ってやる。
颯の背中に穴が開くほど、必殺見つめビーム送ってやるんだから。
颯の前の席なんかマジ地獄。
後ろにいるって考えただけで、うちはご臨終さ。
心臓の早さは神の手を持つ医者でも治せないだろう。