ピンクの落書き
だらだらと続く階段を上がり、最上階へ。
なんだよ?
あのふたり、何か隠してるだろ~。
誰もいない廊下を歩き、音楽室の前まで来た。
カギをこじ開け中に入った。
むうっと熱気が溢れた。
この匂い、景色、久しぶりだなぁ…
毎週木曜日が楽しみで…
必死だったあの頃。
忘れ物って何だろ?
とりあえず、自分の席に行って、机の周りを見てみる。
しゃがみ込んで念入りに探す。
忘れ物と言われるわからない物を。
「はぁ~…」
忘れ物なんか無いじゃんか。
見つからず、席に座った。
一番後ろの席。
隣は…颯の席で。
窓を開けると、夏のくせに涼しい風がひとつ入り髪を舞い上がらせた。
綺麗な青に入道雲。
夏の空が好きだ。
この空を見たら、今まで家に閉じこもっていた自分がバカじゃん。
…そう思えてきた。
夏はとっくに始まっていたのに、夏の空を見たのは今日が初めてなんだよ?
バカみたい。