ピンクの落書き




だらだらと続く階段を上がり、最上階へ。



なんだよ?


あのふたり、何か隠してるだろ~。



誰もいない廊下を歩き、音楽室の前まで来た。



カギをこじ開け中に入った。


むうっと熱気が溢れた。




この匂い、景色、久しぶりだなぁ…


毎週木曜日が楽しみで…



必死だったあの頃。



忘れ物って何だろ?


とりあえず、自分の席に行って、机の周りを見てみる。


しゃがみ込んで念入りに探す。



忘れ物と言われるわからない物を。




「はぁ~…」



忘れ物なんか無いじゃんか。


見つからず、席に座った。



一番後ろの席。


隣は…颯の席で。




窓を開けると、夏のくせに涼しい風がひとつ入り髪を舞い上がらせた。


綺麗な青に入道雲。


夏の空が好きだ。



この空を見たら、今まで家に閉じこもっていた自分がバカじゃん。


…そう思えてきた。



夏はとっくに始まっていたのに、夏の空を見たのは今日が初めてなんだよ?


バカみたい。









< 52 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop