ピンクの落書き
頭の中で『颯』の文字を思い浮かべる。
「翼なら…なんて書く?」
さっきまでとは違い、急に優しい声になった颯の声。
答えろなんて上から目線な発言してたくせに。
「な、内緒…」
颯の目がうちを捕らえているのがわかった。
恥ずかしくなって隣が見れない…。
硬直してしまったうち。
「この心理テスト、ここの机の中に入ってた本にあってさ。俺もやった」
あ!
も、もしかしてのもしかして…
花恋ちゃんが言ってた人って、本当に颯だったんじゃあ…!
「は、颯は…」
声がなぜだか震える。
「なんて…か、書いたの?3番」
ゆっくりと首を動かし、颯を少しずつ目に映した。
ビクッとなって背筋が伸びた。
だって、颯がすごい見つめてたんだもん。
颯の綺麗な真ん丸の黒目にうちの照れている顔が映っている。
こんなの鏡みたいだ。