ピンクの落書き




「いきなりどーしたんだよ?」



涙を拭ってくれる颯。



「ちょっと…前の男を思い出しちゃって…」


こうすけのこと…




「別れてるんだろ?」





いきなり音信不通になって…



この間、街で違う女と手を繋いで歩いてたの見てしまった。


やっぱ身体だけだった。




こんな幸せを前にして、いろいろ思い出してしまった。



恋愛をしていいことなんて今まで一度もなかった。



中1の時に初めてできた彼氏。


3年生の先輩で。




その時は、まだ純粋なちゃんとした付き合い方をすると思ってた。


なのに、学校の男子トイレに連れ込まれて無理矢理…


やっぱり身体だけだった。


口もきいてくれなくなって、先輩は何も言わず卒業していった。





それからだったんだ。


男を信用できなくなったのは。



何人も彼氏というのを作ったが、ちゃんとした恋なんて無かった。


まだ、13年しか生きていないのに。


「うん、別れてる。ごめんね…元彼なんかの話して…」



「俺は、ずっとここにいるから」



颯の言葉だけは信じられる。


颯の瞳は濁っていない。



離れたりしない。



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