ピンクの落書き
この恋で、たくさんの幸せを知った。
初めてこんなにも泣いた。
いっぱいありがとうと思った。
「これ。翼だろ?書いたの」
颯が呟きながら、指を指し示したとこには、刻まれたあの文字。
“14才おめでとう”
「……うん」
「翼がいなかったときに気付いてさ。誕生日の日いればよかったなぁ~、ってすげぇ後悔したし」
刻まれた文字を指でなぞりながら颯は言う。
「バカ!いろっつーの!」
ただの…照れ隠し。
素直になれないね、うち。
「バカ言うな。……なぁ。また彫らね?」
とっておきのビッグなことを思いついたんだろう。
子供がおもしろいことを発見したときの弾けた笑顔みたいな颯の笑顔。
「何を?」
うちの質問には答えず、颯は自分の筆箱からシャーペンを取り出した。
何も言わず颯の様子を観察。
颯の机の左下。
一番端っこに、『はやて』と縦に刻んだ。
「翼。そっちの机のこの『はやて』の隣に『つばさ』って書いて」
言われた通りに、刻まれた『はやて』の隣に自分の名前を自分の机に刻む。
「で?書いたよ」
歪でガタガタな文字。
「それでぇ~…」
と言いながら、颯は慎重に何かを刻んだ。
「何コレ?」
見ただけでは、すぐにこの正体がわからなかった。