ピンクの落書き
その言葉に体がビクつく。
「まじかよっ!?」
「だから、早く行けって!」
「おう!」
俺は、音楽室へ向かうため走りだした。
教室を出る際に振り返り
「琉那、さんきゅ」
とだけ伝えた。
「べ、別に颯の協力をしたわけじゃないんだから!バーカっ!」
後ろから琉那の言葉が聞こえて来る。
笑えるな、琉那のやつ。
でも、琉那のおかげだ。
この気持ちを認めたのも…決心がついたのも。
休み時間になる度、琉那は俺のところに来て永遠に翼の話を聞かされた。
翼のことを俺にわかってもらうために。
翼と俺をくっつけるために。
『颯のためじゃないんだから』といつも言っていたが…。
そんな琉那に感謝しなきゃだな。
廊下を駆けている途中に、授業が始まるチャイムが鳴った。
俺の横を女の子が本を抱えて通り過ぎた。
あ、あの本。
心理テストの本。
この子の本だったんだな…
俺は、音楽室の前に辿りついた。
走って荒くなった息を整える。
この音楽室の中に…翼がいるのか?