きっとさ、運命なんだよ。
そこまで聞いて
私は気づく
今までおばあちゃんが
喜成さんの話を
一度もしなかったという事に
そして―
喜成さんは戦争に招集されたために
おばあちゃんと別れた
ということは
私のちっぽけな脳みそでも
充分に理解できる事であった
やがて戦争は日本の負けで
終わってしまった
だが
戦争が終わり
一週間経っても
二週間経っても―
おばあちゃんが死んでしまった日も
喜成さんは
おばあちゃんの前に
姿を見せなかった
だから
おばあちゃんは
喜成さんはもう
死んでしまったのだと諦めた
もともと喜成さんは
家族がいなかったし
親戚も遠いつながりでしかいなかった
だから確認のしようがない
そう思い
喜成さんの事は忘れて
私のおじいちゃん
(2年前に他界した)
と結婚したのだった
ここまでは
お母さんがよく
おばあちゃんから話してもらった事を
教えてもらった
だけど
まだ疑問に思う事は
いくらでもあった
その中でも最大な謎は……
喜成さんは今まで
どうしておばあちゃんに
会いに行かなかったのか
気がつくと
喜成さんは
部屋から出ようと
帰り支度をしている所だった