恋がはじまるよ
プロローグ
 春休みが始まったばかりの、水曜日の朝。

 目を覚ました結衣(ゆい)が、一階へ降りると、リビングのソファには、父親がパジャマ姿のまますわっていた。

 ローテーブルの上には、空になったコーヒーカップ。

 何やら深刻そうな顔をしている。

 時計の針は、午前10時。

 いつもなら、とっくに仕事に出かけている筈の父親が、そこにいることが不思議だった。

 具合でも悪いのかもしれない。

「お父さん、おはよう」

 声をかけると。

「結衣か……」

 父親は、まるで今初めて、結衣がいることに気が付いたような顔をしていて。

 それから。

「話がある。すわりなさい」

 自分の向かい側の一人がけ用のソファを指した。



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