恋がはじまるよ
「あの、どうして、名前知ってるんですか?」

 初めて会った駅員が、自分の名前を知っていることが不思議で、そう訊ねると。

「ここまで連れてきてくれた子が、教えてくれたよ。友だちでしょ? 青陵の制服だったし」

 駅員は記憶を辿るように、ゆっくりと言葉を続けた。

「髪が、ちょっと長めのサラサラで、綺麗な顔をした男の子だったな」

 結衣の心臓が、ドキドキと速く波打ち始める。

 きっと、洸貴だ。

 そう、結衣は思った。
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