恋がはじまるよ
 遠くなっていく意識の中で結衣の名前を呼んだのは、洸貴だったに違いない。

 それ以外に、結衣の名前を知っている人間がいる筈もないし、結衣を助けてくれたのは、洸貴しかいない。

 洸貴は、今もやっぱり、結衣が大好きだったやさしい洸貴のままなのだろう。

 それが、とても嬉しくて。

 早く、洸貴に会いたくなって。

「ありがとうございました!」

 駅員に礼を言うと、結衣は急いで、その部屋を飛び出した。
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