恋がはじまるよ
 学校のある駅から、電車で10分。

 最寄駅からは、徒歩7分。

 大きな家が建ち並ぶ閑静な住宅街に、おじの家はあった。

 表札に『大倉』と出ているから、間違いない。

 周りも豪邸ばかりなので、特別抜きん出ているということは無かったが、白い外壁の三階建ての家は、充分立派だった。

 門の前に立った結衣は、少し緊張しながらインターフォンのボタンを押した。

 おじや、おばが出たら、これからしばらく世話になるのだから、きちんと挨拶をしなくてはいけない。

 ドキドキしていると、やや間があって、スピーカーから返事があった。

「はい……?」

 それは、多分、洸貴の声だった。

「あ、あのっ。結衣です」

 結衣が答えると、インターフォンは切れて、しばらくすると玄関の扉が開いた。

 顔を覗かせたのは、やっぱり洸貴だった。
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