恋がはじまるよ
 結衣が、リビングの真っ白なソファの端にちょこんとすわっていると、洸貴はオレンジジュースの入ったグラスを、結衣の前にあるガラスのテーブルの上に置いてくれた。

 でも、相変わらず不機嫌そうで、黙ったままでいる。

 部屋の中には、気まずい沈黙が流れ始めていた。

 何か話をしなければと思うが、洸貴の不機嫌の原因が解らない。

 それでも。

 これ以上、この気詰まりな空気を我慢するのは嫌だったから。

「こーちゃん、あのっ……」

 とりあえず。

 今朝、駅で助けてくれたことを確かめようと、口を開いた結衣を遮るように、洸貴も話を始めた。

「お前の部屋は、二階の奥。もう荷物運んであるから」

「ありがとう」

 やっと話をしてくれて、ホッとする。
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