恋がはじまるよ
「元々、緑の部屋だったから、家具とかそのままだけど、好きに使っていいって」

「え? 緑ちゃんは?」

「知らないんだ? あいつ、三月からロンドンに留学中」

「留学?」

 初耳だった。

 驚いて目をまるくする結衣を見て、洸貴は眉間にしわを寄せた。

「じゃあ、これも知らないよな? 親父たちは、ニューヨーク。今、仕事の拠点はあっちにあるから、この家にはほとんど帰ってこないよ」

 そんな話は、聞かされていない。

「つまり、この家に住むのは、俺とお前。二人きりってこと」
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