恋がはじまるよ
 結衣は、両親と離れて、一人で東京へ来た。

 洸貴も、自分の家だけれど、一人で暮らしている。

 きっと、結衣が寂しいように、洸貴も寂しいだろう。

 でも、もしかしたら。

 結衣がこの家に来たことで、少しは洸貴の寂しさがまぎれるかもしれない。

「二人だったら、寂しくないもん。大丈夫だよね」

 そう思って、結衣は笑ってみせたのだが、洸貴は、ふうっと大きな、ため息をついた。

「初めに言っておくけど。俺、干渉されるの嫌いなんだ」

「こーちゃん?」

「メシも外で食べたり、弁当買ってきたり、俺は適当にやってるから、お前も好きなようにすればいいよ。俺は、お前と仲良く暮らそうなんて思ってないから」

 冷たく言い放つと、さっさとリビングから出ていってしまった。

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