恋がはじまるよ
「え、こーちゃん、ちょっと待って!」

 慌てて立ち上がった結衣が、後を追いかけると。

 洸貴は、階段の上で振り返って、じっと結衣の顔を見下ろした。

「それから、その『こーちゃん』って呼ぶの、やめろ」

「え……?」

「ガキくさいから」

 呆然とする結衣にそれだけ言うと、さっさと自分の部屋に入ってしまう。

 パタン。

 ドアの閉まる乾いた音が、結衣を突き放すように響いた。
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