恋がはじまるよ
『俺は、お前と仲良く暮らそうなんて思ってないから』

 洸貴の声が、ぐるぐると頭をめぐる。

 どうして、洸貴は、あんなことを言ったのだろう。

 結衣は、のろのろと階段を上ると、二階のいちばん奥の部屋のドアを開けた。

 ベッドに潜り込んで、頭からフトンをかぶった途端、泣き出してしまった。

 今朝、両親と別れたときは、泣くのを我慢できたのに、今は、後から後から、涙が溢れて止まらない。

 どうして、洸貴は、あんなことを言ったのだろう。

 あれでは、結衣の知っているやさしい洸貴とは、まるで別人だ。

 東京での暮らしに、不安はいっぱいあったけれど、洸貴が一緒だから大丈夫だと思っていたのに。

 自覚のない間に、何か洸貴に嫌われるようなことをしたのだろうか。

 でも。

 今朝、駅で助けてくれたのは、洸貴だった筈なのに……。

 冷たくされる理由が解らないまま、結衣は、またぼろぼろと涙を零した。

 


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