恋がはじまるよ
 翌朝。

 結衣が目を覚ましたときには、もう、洸貴の姿は家の中になかった。

 ダイニングのテーブルの上に、鍵と、メロンパンの入ったコンビニの袋が置いてある。

 袋の下には、走り書きの字で書かれたメモが挟まっていた。

『鍵。パンは、残ったから食べろ』

 メモを書いたのは、勿論、洸貴だった。

 鍵だけでなく、メロンパンが置いてあったことに、結衣はびっくりした。

 『残ったから』と書いてあるが、きっと、結衣の朝ごはんを気にして洸貴が用意してくれたに違いない。

 昨日は、あんな冷たいことを言ったが、やっぱり洸貴は、昔から変わらない、やさしい洸貴なのだ。

 真っ暗だった気持ちに、少し明るい光が射した気がする。
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