恋がはじまるよ
 階段を降りて、渡り廊下を抜けて、別の校舎に入る。

「ここが学食。あんまりおいしくないんだけどね」

 右手にある大きなホールのような部屋を指して、ちひろが笑った。

「パンとかも、売ってるよ」

 窓越しに見ると、中はかなりの人数で賑わっていた。

 もしかして、洸貴もこの中にいるかもしれない。

 そう思って、中を覗き込んでいると。

「でも、今日はここに用事無いから」

 ちひろは、結衣の腕を、ぐいっと引っ張った。

「え、結衣、お弁当持ってないよ」

「いいの、いいの。大丈夫」

 慌てる結衣に構わず、ちひろはにこにこ笑いながら、先に立って、階段を上っていく。
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