恋がはじまるよ
「さっきのは、中等部3年の、鈴原(すずはら)修。小学校を卒業するまで、大阪に住んでいたんだって」

 それなら大阪弁を喋るのも納得だと、結衣が思っていると。

 廊下から、ばたばたいう足音が聞こえてきて、勢いよくドアが開けられた。

「遅くなって、ゴメン! 授業延長だったんだよ!」

「遠藤(えんどう)先輩、遅いわ! 俺、腹ペコペコやのに」

 湯呑みをのせたお盆を持って戻ってきた修が、口を尖らせて抗議する。

「だから、俺のせいじゃないんだってば」

 まだ肩で息をしている、遠藤と呼ばれた彼は、メガネをかけていて、いかにも勉強ができそうな真面目そうな雰囲気だった。

「遠藤先輩。うちのクラスの編入生の、渡辺結衣ちゃんです」

 ちひろがそう言うと、遠藤は、メガネの奥の瞳をキラキラ輝かせながら、結衣に右手を差し出した。

「すごいな! 高等部から編入するなんて、渡辺さん、すごく頭いいんだね」

「え、あの、全然そんなことないんです」

 結衣は試験を受けずに入学させてもらったから、頭がいいなどと思われると、本当に困ってしまう。

「あ、自己紹介してないや。3年で、部長の、遠藤達哉(たつや)です。いやー、嬉しいなあ。入部大歓迎!」

「入部?」



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