恋がはじまるよ
 その背中を、結衣が目で追っていると。

「修は、両親が離婚して、今、お母さんと二人暮らしなんだ」

 遠藤が、口を開いた。

「お母さん働いてるから、家のこと少しでも手伝って、楽させてあげたいって言って、ウチに入ったんだよね。でも、そんなこと自分で言うの照れくさいんじゃないのかな」

「そうなんですか……」

「うん。修、ほんと、エラいんだよね」

 隣で、ちひろも、しみじみ呟く。

「紅茶、いれたよ」

 そのうち戻ってきた修の顔を、結衣が黙ってじっと見ると。

「ちょっと! どうせ、二人とも、俺の悪口言うてたんやろ?」

 修は、顔を真っ赤にした。
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