恋がはじまるよ
 引越しの荷造りや、いろいろな手続きなどで、それからの二週間は、あっという間に過ぎた。

 春休みは、のんびり友だちと遊ぶつもりだったのに、とてもそれどころではなかった。

 休み中に、直接会って話せたのは、親友の奈津子(なつこ)だけ。

 他にも会いたい友だちはいたが、メールを送るだけで精いっぱいだった。

 結衣が東京へ引っ越すことを聞いた、奈津子は。

「いいな、東京! 羨ましいよ。田舎と違って、カッコいい男の子も、きっといっぱいいるよね。芸能人に会ったら、写メ送ってね。東京、絶対、楽しいよ。大丈夫だよ」

 半分泣きながら、無理して作った笑顔で、結衣を励ますようにそんなことを言った。

「静岡と東京なんて、結構、近いんだから。夏休みとか遊びに行くね」

「うん。結衣も長いお休みには、帰ってくるね。メールもするし……」

 結衣も、奈津子の涙につられて思わず涙ぐんでしまった。









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