初恋
正門に走りついたあたしはそれらしき背中を見つけた。
ただでさえ息切れて心臓が早いのに…
名前を呼ぼうとするだけなのに…
泣きたくなる…
胸が苦しいよ……
「航平、」
「あ、おせーよ」
「あ……………!」
心臓が止まりそう。
この場から、消えたいと願った。
でも、目があってしまったんだ、
大好きな航ちゃんと。
「唯さ、ちょっと先に駅いって?」
「なに?忘れものでもした?」
「んー、ちょっと。あとで話すから。ごめん。」
「まーいーや、先歩いてるね」
「ん、さんきゅ」
スレンダーなキレイな人。
航ちゃんに近付いてキスができる距離で
ニコッと微笑んで歩いていったその人……。
…あたしたちももう18歳だもんね。
キスするのさえ怖いのは…
“航ちゃんのお嫁さん”を
いまでも心のどこかで夢見てたあたしは…
ただただ時間が止まった中学生のあたしだけ。