AKANE
「それってやばいよね!? わたしたちも早く追いつかないと・・・」
 朱音が血相を変えてクリストフの顔を見つめ返した。
 アザエルに危険が迫っていることもあり、ルイは仕方無く今は男の言うことに素直に従うことにした。しかし、この謎多き男がいつ正体を現すかもわからないし、何か企んでいる可能性は捨てきれない。朱音がいくらこの男を信用していようとも、自分だけは決して信用しないで主を守ってみせる、とルイは心の中で決心した。
「ボウレドまではここからだとまだ随分距離があります。風に乗って行きましょうか」
 何でもないことのようにクリストフは言ったが、ルイは内心ギクリとしていた。実は、二人には言ってはいなかったが、ルイは極度の高所恐怖症だったのだ。
「ルイ?」
 霞みがかったルイの灰の瞳が大きく動揺しているのに気付いた朱音が心配そう顔を覗きこむ。
「では、いきますよ!」
 その瞬間、再び突風が巻き起こった。
 木の小屋が吹き飛ぶのではないかという強風。
 三人の身体がふわりと宙へと舞い上がった。

「!!!!!!」
 気持ち良さそうに風に身体を任せる朱音と、声も出せない程に顔を引き攣らせる灰の髪の少年、そして謎の美容師クリストフはボウレドに向けて旅を再開させたのである。



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