AKANE
 なぜかあの少年王の懸命な姿に負けてしまい、フェルデンの居場所を教えてしまったことに直後はひどく後悔したが、一晩中フェルデンの眠る部屋の明かりが灯っていたことや、時折窓越しに聞こえてくる少年王の懺悔の言葉に、戸惑いを覚えた。  
 いくら待てども寝首を搔こうとする気配も無く、ひたすらに明け方まで少年王の看病は続き、日が明けきる前には少年王を含む三人は静かに診療所から去っていった。
(あの少年王、一体何者なんだ・・・? フェルデン殿下とはどんな関わりが・・・)

 ユリウスは冷えた外気にぶるっと一つ身震いすると、もう一度毛布に深く身体を潜らせた。そして昨晩の出来事を目を閉じて思い出していた。





ビュンッと風を切る音。
 ユリウスはさっと身を翻して刃を逃れた。

 小雨が降り始めたせいで、仕方なく宿を探すユリウスと護送中の罪人アザエルは、闇と同化する藍色の衣に身を包んだ謎の覆面の三人組みに囲まれていた。
 降りしきる雨で視界が悪く、服は水を吸ってひどく重い。
 この者達は、雨の音に紛れて突如二人の前に姿を現したのであった。
「何者だ・・・!」
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