AKANE
湾曲した剣士らしからぬ短い刀身に、見慣れぬ上下の境目のわからぬ衣装。
三人の身のこなしは軽く、常人ではないことはすぐにユリウスにもわかった。
 ユリウスの投げかけに反応を示すこともなく、三人は容赦なく刃を繰り出す。
『ドッ』という鈍い音とともに、一人が後方に背中から転がった。未だ手を拘束されたままのアザエルが、片足で蹴りを溝落ちに食らわせたのだ。
「元老院の犬か・・・」
 降りしきる雨の中、ぽたぽたと水滴が碧い髪を滴り、水を含んだその髪は、いつもよりも僅かに落ち着いた色を放つ。
 すぐさま別の者がアザエルにブンと刃を振り降ろし、もう一人が渾身の力を込めてユリウスに飛びかかった。
『ガキイン!』
 刃と刃のぶつかり合うするどい音。
 ユリウスは覆面の者の刃を剣でもって制していた。
 アザエルはさっと身体を反らせると、目にも留まらぬ速さで敵の背後に回りこみ、拘束された手で相手の首を羽交い絞めにした。
 首を強く締め付けられ、僅かに緩んだ手から剣を取り上げると、アザエルは慣れた手つきで男の首を搔き切った。
「ぐう・・・!」
 男はくぐもった呻き声を洩らし、喉もとから赤黒い血を滴らせながら、バサリと地面にくず折れた。
「くそっ!」
 腹を蹴られたもう一人が勢いよくアザエルに刃を向け走り出した。
 そのすぐ近くで、ユリウスと覆面の別の男が剣を何度もぶつけ合う激しい音が鳴り響く。
 ぬかるんだ足元には先程首を搔き切られた男が倒れ、紅い水たまりをつくっていた。
 アザエルが奪い取った刃で手首の縄を切り外し、ぱらりと縄がばらけて落ちていく。それとほぼ同時に、男の向けた切っ先が僅かにアザエルの碧い髪を掠めた。
『シュッ』 
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