AKANE
6話 リーベル号
「あの人達は・・・?」
出航を直前に控えたリーベル号の甲板は忙しない船乗り達の往来でごった返している。
その中で、一人の船乗りが不思議そうな面持ちで、この船に唯一の客室に案内される三人連れの者達を見つめていた。
「ああ、なんでも・・・、あの旦那はアルノ船長の古い友人だそうだ」
最後の荷を運び込みながら、もう一人の船乗りが言った。
「あの紳士が? へえ!」
客室に繋がる階段に消えていく三人の後ろ姿を見つめながら、男は腕組みをした。
「なんか匂うんだよな」
縄で編まれた荷を肩の上で担ぎ直すと、男は目を細めて言った。
「なにが?」
「お前、あの旦那の後ろを歩くお嬢さんを見たか? 鍔(つば)のでけえ帽子と日除けのベールでよくは見えなかったが、ありゃあ相当の別嬪さんだ。着ているドレスも地味なものを選んではいるが、上物と見た! 横にくっ付いている坊やはきっと御付きの者だぜ!」
腕組みをした男が驚いたように口をあんぐり開けた。
「ってえとなると・・・、あれはどっかの貴族の娘さんかなんかか?」
荷物が肩からずれ落ちそうになるのを、何度か修正しながらも、男は鼻を鳴らして笑った。
「察しが悪ぃな、バカ! 俺ぁ、あのお嬢さんはどっかの姫さんと見たぜ」
「えっ! あの旦那の娘じゃねえのか!?」
他の者が仕事をさぼっている二人にばつの悪い視線を向け始めたので、荷を載せた男は困り顔で再び足を動かし始めた。
「さあな。お忍びで国を渡らなきゃなんねぇ理由かなんかあるんじゃねぇか? じゃ、俺ぁそろそろ仕事に戻る」
男達はそそくさと再び忙しない甲板の船乗り達の往来の中に紛れ込んでいった。
出航を直前に控えたリーベル号の甲板は忙しない船乗り達の往来でごった返している。
その中で、一人の船乗りが不思議そうな面持ちで、この船に唯一の客室に案内される三人連れの者達を見つめていた。
「ああ、なんでも・・・、あの旦那はアルノ船長の古い友人だそうだ」
最後の荷を運び込みながら、もう一人の船乗りが言った。
「あの紳士が? へえ!」
客室に繋がる階段に消えていく三人の後ろ姿を見つめながら、男は腕組みをした。
「なんか匂うんだよな」
縄で編まれた荷を肩の上で担ぎ直すと、男は目を細めて言った。
「なにが?」
「お前、あの旦那の後ろを歩くお嬢さんを見たか? 鍔(つば)のでけえ帽子と日除けのベールでよくは見えなかったが、ありゃあ相当の別嬪さんだ。着ているドレスも地味なものを選んではいるが、上物と見た! 横にくっ付いている坊やはきっと御付きの者だぜ!」
腕組みをした男が驚いたように口をあんぐり開けた。
「ってえとなると・・・、あれはどっかの貴族の娘さんかなんかか?」
荷物が肩からずれ落ちそうになるのを、何度か修正しながらも、男は鼻を鳴らして笑った。
「察しが悪ぃな、バカ! 俺ぁ、あのお嬢さんはどっかの姫さんと見たぜ」
「えっ! あの旦那の娘じゃねえのか!?」
他の者が仕事をさぼっている二人にばつの悪い視線を向け始めたので、荷を載せた男は困り顔で再び足を動かし始めた。
「さあな。お忍びで国を渡らなきゃなんねぇ理由かなんかあるんじゃねぇか? じゃ、俺ぁそろそろ仕事に戻る」
男達はそそくさと再び忙しない甲板の船乗り達の往来の中に紛れ込んでいった。