AKANE
「あなたは・・・」
ルイがぽかんとしている様子を見て、青年は察しよく言った。
「ああ、悪いっ! お前、昨日の嵐で海に投げ出されたの覚えてる?」
こくりと頷いたルイに、青年は笑顔のまま話を続けた。
「俺、リーベル号の乗り組み員でさ、お前を助けようとして海に飛び込んだはいいけど一緒に流されちまったんだよな」
昨晩の悪夢を思い出し、ルイは真っ青になった。
(へ、陛下・・・!)
身体に巻きつけた毛布が外れ落ちてしまうのも構わず、ルイは命の恩人かもしれない目の前の青年の肩を掴みかかった。
「僕と一緒に流された人いたでしょ!? その人はどうなりました!?」
「お、おいっ」
いきなり肩を掴みかかられて、青年は困ったように声をあげた。
「あっ・・・す、すいません」
とんでもないことをしてしまったと気付いて、慌ててルイは手を離した。
「残念だが、俺は流されたお前しか見てない」
ふらふらと立ち上がったルイは灰の瞳をこれ以上ない程見開き、そのまま近くの木の幹へともたれ掛かった。
「そ、そんな・・・」
ルイは自らの手の平を見つめた。百二十数年生きたというのに、まだ小さな少年の手だ。この手で確かに一度は主をしっかりと掴んだのに、その手を離してしまったのだ。
ルイは、“お前を世話役に命じる”と、アザエルに初めて告げられたときのことを今でも鮮明に覚えている。天蓋付きのベッドで安らかに眠るクロウ王の姿は、まるで魔王ルシファーを生き写したかのように美しく、それでいて一切の禍々しさは感じられなかった。
そんなクロウ王だったからこそ、ルイは強く惹きつけられていたのかもしれない。
“アザエルがいない今、ルイはわたしの側近です”
何も出来ず、近くに仕えることしかできないルイにも関わらず、クロウはヘロルドにはっきりとそう言い切ってくれた。
ルイがぽかんとしている様子を見て、青年は察しよく言った。
「ああ、悪いっ! お前、昨日の嵐で海に投げ出されたの覚えてる?」
こくりと頷いたルイに、青年は笑顔のまま話を続けた。
「俺、リーベル号の乗り組み員でさ、お前を助けようとして海に飛び込んだはいいけど一緒に流されちまったんだよな」
昨晩の悪夢を思い出し、ルイは真っ青になった。
(へ、陛下・・・!)
身体に巻きつけた毛布が外れ落ちてしまうのも構わず、ルイは命の恩人かもしれない目の前の青年の肩を掴みかかった。
「僕と一緒に流された人いたでしょ!? その人はどうなりました!?」
「お、おいっ」
いきなり肩を掴みかかられて、青年は困ったように声をあげた。
「あっ・・・す、すいません」
とんでもないことをしてしまったと気付いて、慌ててルイは手を離した。
「残念だが、俺は流されたお前しか見てない」
ふらふらと立ち上がったルイは灰の瞳をこれ以上ない程見開き、そのまま近くの木の幹へともたれ掛かった。
「そ、そんな・・・」
ルイは自らの手の平を見つめた。百二十数年生きたというのに、まだ小さな少年の手だ。この手で確かに一度は主をしっかりと掴んだのに、その手を離してしまったのだ。
ルイは、“お前を世話役に命じる”と、アザエルに初めて告げられたときのことを今でも鮮明に覚えている。天蓋付きのベッドで安らかに眠るクロウ王の姿は、まるで魔王ルシファーを生き写したかのように美しく、それでいて一切の禍々しさは感じられなかった。
そんなクロウ王だったからこそ、ルイは強く惹きつけられていたのかもしれない。
“アザエルがいない今、ルイはわたしの側近です”
何も出来ず、近くに仕えることしかできないルイにも関わらず、クロウはヘロルドにはっきりとそう言い切ってくれた。