AKANE
「なんのこと」
つんとして朱音は突っぱねた。
アリゴとともに行動をともにしていた禿げ上がった頭の大男パオロとは、子ども達を荷馬車から降ろしたあの場所で別れ、今はこのアリゴと朱音の二人きりである。
この男には、“逃げようなんて馬鹿なことしてみろ、その生っちろい足を歩けねぇように折ってやるからな”と、さんざん脅されてここまで来たが、この砂漠で逃げ出そうものなら干からびてきっと死ぬ運命であろう。
「へっへ、ある男から聞いたのさ。お前さんがサンタシの王の尋ね人だってこたぁな」た
誰からそんな情報を聞いたのは不明だったが、二人はサンタシの王に朱音を会わせることで、礼として大金を貰える筈だと大喜びしていた。
しかしながら、サンタシの王、即ちヴィクトル王に会うには白亜城に向かうということ。つまりはフェルデンに正体を悟られてしまうかもしれないということに気付き、朱音はこのままアリゴにみすみすサンタシに連れられて行くには少々まずいかもしれないと考え始めていた。
「何もしてないけど。人違いじゃないの?」
リストアーニャを離れ、アストラの砂漠に入ってからというもの、人と会う機会のなくなった二人はまだ、サンタシとゴーディアの戦争が再開された事実を知らない。
ふんっと鼻を鳴らすと、アリゴはそれきり口を噤んだ。
(ボリスはちゃんとクリストフさんに会って話をしてくれたのかな? ベッドの下のアザエルは見つけてもらえたかな・・・。子ども達は無事に逃がしてもらえたんだろうか・・・?)
自分の置かれている状況よりも、朱音はそれが気になって、アストラの砂漠を横断中もずっとそのことばかりを考えていた。
あのクリストフが、こんなにも時間が経っているというのに朱音の前に現れないなど、到底考えられないことであった。何か、来られない事情があるのか、様子を伺っているのか、と朱音は判断していた。
それに、クリストフとはぐれてしまってから、連絡がとれなくなったルイが、今どこでどうしているのかを思うと、彼を無理矢理魔城から連れ出したことを、朱音は後悔し始めていた。気の優しい彼のことだ、皆とはぐれ、きっと心細い思いをしているに違いない。
「な、なんだ・・・!?」
突然アリゴの妙な声が上がる。
つんとして朱音は突っぱねた。
アリゴとともに行動をともにしていた禿げ上がった頭の大男パオロとは、子ども達を荷馬車から降ろしたあの場所で別れ、今はこのアリゴと朱音の二人きりである。
この男には、“逃げようなんて馬鹿なことしてみろ、その生っちろい足を歩けねぇように折ってやるからな”と、さんざん脅されてここまで来たが、この砂漠で逃げ出そうものなら干からびてきっと死ぬ運命であろう。
「へっへ、ある男から聞いたのさ。お前さんがサンタシの王の尋ね人だってこたぁな」た
誰からそんな情報を聞いたのは不明だったが、二人はサンタシの王に朱音を会わせることで、礼として大金を貰える筈だと大喜びしていた。
しかしながら、サンタシの王、即ちヴィクトル王に会うには白亜城に向かうということ。つまりはフェルデンに正体を悟られてしまうかもしれないということに気付き、朱音はこのままアリゴにみすみすサンタシに連れられて行くには少々まずいかもしれないと考え始めていた。
「何もしてないけど。人違いじゃないの?」
リストアーニャを離れ、アストラの砂漠に入ってからというもの、人と会う機会のなくなった二人はまだ、サンタシとゴーディアの戦争が再開された事実を知らない。
ふんっと鼻を鳴らすと、アリゴはそれきり口を噤んだ。
(ボリスはちゃんとクリストフさんに会って話をしてくれたのかな? ベッドの下のアザエルは見つけてもらえたかな・・・。子ども達は無事に逃がしてもらえたんだろうか・・・?)
自分の置かれている状況よりも、朱音はそれが気になって、アストラの砂漠を横断中もずっとそのことばかりを考えていた。
あのクリストフが、こんなにも時間が経っているというのに朱音の前に現れないなど、到底考えられないことであった。何か、来られない事情があるのか、様子を伺っているのか、と朱音は判断していた。
それに、クリストフとはぐれてしまってから、連絡がとれなくなったルイが、今どこでどうしているのかを思うと、彼を無理矢理魔城から連れ出したことを、朱音は後悔し始めていた。気の優しい彼のことだ、皆とはぐれ、きっと心細い思いをしているに違いない。
「な、なんだ・・・!?」
突然アリゴの妙な声が上がる。