AKANE
16話 散りゆく華
朱音は腕を後ろ手に拘束されていた。
半ば引きずられるような形で地下への入り口を潜(くぐ)ると、地下の一室に放り込まれた。
ここは、アストラの砂漠に隣接する茶色い岩山と岩壁に覆われた地域で、各国からも見捨てられた土地だった。一見何もないただの岩山に見えるが、隠された入り口を通ると中は巨大な地下道が広がっている。
誰が一体何の為に作ったものなのかは一切不明であったが、今はドラコがアジトとして使用していることだけは明らかだ。もともとは通路だけだった地下のあちこちに、後からドラコの連中が部屋を増設したらしく、通路に比べると些か雑な壁づくりであることに朱音は気付いていた。
「お頭が来るまでここで大人しくしてな」
ドラコの手下の一人が、ごつごつした岩壁に尻餅をついて目に涙を浮かべている朱音に、乱暴に言い放った。
まるで、どこからか拾い集めてきた鉄屑をくっつけたような鉄の扉を勢いよく閉じられた後は、室内に薄暗闇が訪れた。岩壁に唯一設置された蝋燭立てには、すっかり短くなった蝋燭が一本揺らめきながら小さく燃えているだけだ。
「陛下・・・」
突如部屋の隅から懐かしい聞き覚えのある少年の声が聞こえ、朱音は勢いよく振り返った。
少しずつ暗闇に慣れ始めた朱音の目に、うっすらと霞がかった灰の髪が浮かび上がってくる。
ルイは手足を拘束され、身動きが取れない様子で蹲っている。
「ルイ!?」
驚き、慌てて朱音はルイに擦り寄る。
「陛下、ご無事でしたか・・・!」
ルイは心底安心したように、ほっと溜息を溢した。
「ルイこそ!」
しかし、すぐにルイは悲しそうに俯いてしまった。