AKANE
「申し訳ありませんでした、陛下・・・。陛下をこんな目に遭わせてしまった原因は全部僕のせいなんです。あの人の正体がまさかドラコの頭領だったなんて・・・。迂闊でした」
 薄暗闇の中でも、ルイの顔色が優れないことは朱音にもすぐわかった。
「ルイのせいじゃないよ! わたしだって、あの人が賊の頭領をしてるなんて知らなかったもん」
 寧ろ、朱音は自分がルイに謝らねばならない方だと考えていた。自分が魔城を抜け出そうなんて思いもしなければ、ルイはこんな目に遭わないで済んでいたのにと思うと、朱音は居た堪れない気持ちになるばかりだった。
「それに、こんな目に遭わせた点では根本はわたしが原因でしょ? そもそもわたしがルイを魔城から連れ出さなきゃ良かったんだよ・・・」
 ふるふると首を横に振り、ルイは灰色の大きな可愛らしい瞳で朱音を見つめた。
「それは違います、陛下。これは僕が望んでついて来た旅です。それに・・・、僕は陛下と一緒に来られたこと、すごく感謝しているんですよ」
 にこりと微笑むと、ルイは縛られた自らの手首を懸命に背中で捻り始めた。
「ルイ?」
 ここに連れて来られるまでにも、縄を外そうと何度も試みた朱音だったから、それがそう簡単には外れないことはよく分かっていた。無理に縄を外そうとすれば、縛られている方の手が擦れて怪我をするだけだからとルイに静止をかけようかと考えていたその時、
「よしっ! 外れた!」
 はらりとルイの手から縄が外れ落ち、すぐ様自由になった手で足の縄を解きにかかった。
 ルイの手には何か鋭利な刃物が握られているようだ。
「陛下、じっとしててください」
 今度は朱音の縄に手をかけると、ルイは手際よくそれを刃物で断ち切っていく。
「それ、船の上でも使っていたよね」
 朱音の視線が自らの手に握られている刃物に注がれていることに気付き、ルイはにこりと笑って頷いた。
「これは、僕とロランに母が与えてくれた果物ナイフなんです。普段はペンダントにして首からさげているんですが、必要なときにこうして開くと果物ナイフになるんですよ。持ち運びにも便利ですし、ずっと愛用しているんです」
 
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