AKANE
 炎が次第におさまり、周囲の状況が見えてくると、少し離れた場所に赤髪のファウストがこちらに手を翳したまま仁王立ちしている姿が視界に入ってきた。
「悪運つえぇな。ルイの奴、最期の力で結界張りやがったか」
 ちっと舌打ちすると、後ろに控えていた手下の男達がにやりと笑いながらその場の様子を見つめている。
「ルイっ・・・?」
 朱音は何かがおかしいことに気付き、立ち上がりきょろきょろとルイの姿を探した。
 炎が二人に襲い掛かる直前、確かにルイは近くに存在した。すぐ近くで表情まで確認することもできたのだ。
 しかし、今、朱音の近くには彼の姿はどこにも見当たらない。
「ルイ? どこ・・・?」
 くくっと笑いを溢すと、ファウストはカツカツと朱音の近くへと歩み寄った。
「ルイはここだ」
 とんと黒い皮の靴で蹴飛ばされ、ふわりと何か粉のようなものが巻き上がった。理解できず、朱音はゆっくりとその粉に手を伸ばしその粉を手の平で掬い上げる。指の間からさらさらと零れおちていく粉。
 震える声で朱音は呟いていた。
「灰だ・・・」
 ルイの霞がかった灰の髪がふと朱音の記憶に蘇る。
「嘘・・・」 
恐ろしいことが起こってしまった。
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