AKANE
「なに!?」
炎の渦巻く中で人影がちらりと蠢いた。
ファウストは数十メートルという距離を後方に跳ね飛ばされ、逃げ出した手下のすぐ近くの石壁に強烈な勢いでのめり込んでいた。
「ぐはっ」
壁にめり込んだ身体のあちこちが衝撃でいかれてしまったようである。
ファウストは口からどす黒い血液を吐き出した。それは、口の中が切れたというよりは、内臓のどこかが傷ついてしまったもの。
ひゅうひゅうと喉を鳴らす頭(かしら)の姿に、手下の青年達は目を丸くした。そして、逃亡も忘れてファウストを見つめたまま佇んでいた。
「お・・・、お頭っ」
やっと正気に戻った手下の一人がファウストに駆け寄る。
ファウスト自身、一体今自分に何が起こったのか全く理解できていなかった。
「あははははははっ、あはははははははっ!!」
バラバラと崩れる石壁と土埃りの向こうで、傷一つどころか衣服の繊維一つ焦がした様子もない少年王が立ち上がり、仰け反ったまま声高々に笑っている姿が、ドラコの面々の目に映った。
「・・・完全にイカれてる・・・」
その場に居たドラコの手下達は、ゾクリと肩を震わせた。
「あはははははははっ、この僕を殺すだと・・・? 笑わせるな。魔王クロウが何もかも皆消してやる、塵も残らぬ程にな。あはははははははっ」
朱音は暗闇の中を彷徨い歩いていた。
何も見えず、何も無い真っ暗闇の中をただ一人。
「ルイ・・・? クリストフさん・・・?」
どこまで続くかわからないこの暗闇は、朱音の不安を掻き立てる。
「誰か、ねえ、ここはどこ・・・? 皆どこに行っちゃったの?」
今にも泣き出しそうな朱音の視界の端に、何かきらりと光るものが映る。
(なに・・・?)
手探りでその光を目指し、朱音は走った。
とにかくこの恐ろしく孤独で淋しい場所から抜け出したい為に。
炎の渦巻く中で人影がちらりと蠢いた。
ファウストは数十メートルという距離を後方に跳ね飛ばされ、逃げ出した手下のすぐ近くの石壁に強烈な勢いでのめり込んでいた。
「ぐはっ」
壁にめり込んだ身体のあちこちが衝撃でいかれてしまったようである。
ファウストは口からどす黒い血液を吐き出した。それは、口の中が切れたというよりは、内臓のどこかが傷ついてしまったもの。
ひゅうひゅうと喉を鳴らす頭(かしら)の姿に、手下の青年達は目を丸くした。そして、逃亡も忘れてファウストを見つめたまま佇んでいた。
「お・・・、お頭っ」
やっと正気に戻った手下の一人がファウストに駆け寄る。
ファウスト自身、一体今自分に何が起こったのか全く理解できていなかった。
「あははははははっ、あはははははははっ!!」
バラバラと崩れる石壁と土埃りの向こうで、傷一つどころか衣服の繊維一つ焦がした様子もない少年王が立ち上がり、仰け反ったまま声高々に笑っている姿が、ドラコの面々の目に映った。
「・・・完全にイカれてる・・・」
その場に居たドラコの手下達は、ゾクリと肩を震わせた。
「あはははははははっ、この僕を殺すだと・・・? 笑わせるな。魔王クロウが何もかも皆消してやる、塵も残らぬ程にな。あはははははははっ」
朱音は暗闇の中を彷徨い歩いていた。
何も見えず、何も無い真っ暗闇の中をただ一人。
「ルイ・・・? クリストフさん・・・?」
どこまで続くかわからないこの暗闇は、朱音の不安を掻き立てる。
「誰か、ねえ、ここはどこ・・・? 皆どこに行っちゃったの?」
今にも泣き出しそうな朱音の視界の端に、何かきらりと光るものが映る。
(なに・・・?)
手探りでその光を目指し、朱音は走った。
とにかくこの恐ろしく孤独で淋しい場所から抜け出したい為に。