AKANE
美しく彩られた大広間。
華麗な音楽が流れ、煌びやかなドレスや宝石を身に纏った女性達が楽しそうに話に華を咲かせている。
ダンスをする男女。
一流のシェフが力を注いだであろう美味そうな料理が皿にずらりと並び、品目は数え切れない程。
黒を基調とした石を使った美しい彫刻の施された壁や柱達。
朱音はここに見覚えがあった。
「ご機嫌麗しゅう、ベリアル王妃。貴女の美しさは衰えるどころかますます磨きがかかったようでございます」
五段程高い位置に設置された玉座の下で、優雅にどこぞの公爵かが膝をつきベリアルの中指の大きな石のついた指輪に口付けていた。
「まあ、ブラントミュラー公爵。相変わらずお上手だこと。この度はわざわざ遠い地からわたくしの誕生祝いに駆け付けてくだすったこと、感謝いたしますわ」
アプリコットのふわりとカールした髪の合間からほんのりとピンク色の愛らしい笑みが伺え、その場にいた誰もがその美しさに溜息をついた。
「しかし、この戦の最中にこのような盛大なパーティーを開催なされるとは、ゴーディアの国政は順風満帆のようでございますね。ベリアル王妃がルシファー陛下のお隣に居られれば、この国も安泰でございましょう」
はははと笑うブラントミュラー公爵に、ベリアルは恥ずかしそうに遠慮がちに微笑んでいた。
このとき、ベリアルを魔王ルシファーの正妃として迎え入れてからすでに五十年が経過していた。
「しっかしこの国、一時は資金不足でどうなるかと思ったが、ベリアル王妃様が嫁いで来られて本当に救われたな。なんてったって、ご実家は世界の大商人コンコーネ家だもんな。それであの愛らしさだ、恐れ入るよ」
その様子を見ていた貴族階級の男達が小声でひそひそと話をしている。