AKANE
アザエルがブラントミュラーに手を翳そうとする。
「動くな!」
何者かの腕が、クロウの首を絡めとりその身体が傾いたことに気付き、アザエルはぴたりとその手を止める。クロウの首にはすでに剣先が宛がわれており、その切っ先が僅かに喰い込み血を垂れ流していた。
クロウに切っ先を向けていたのは、なんとゴーディアの近衛兵の一人だった。つまりはサンタシの間諜ということになる。
そんな状況にも関わらず、クロウはなんの表情も浮かべないまま、ただじっと父とその側近を見つめていた。
魔王ルシファーは毒による痺れで魔力を発動できないない状態にあった。これはが普通の人間であるならば、今頃はとっくに死に絶えていたものである。
首に刃を据え付けられたまま、クロウは引きずられるようにして広間を連れ出されていく。
すぐ後を追わなければならないことはアザエルにも分かってはいたが、忠誠を誓った王の傍を離れることはさすがに憚られたし、アザエルの力をもってすれば、一部のやり手の者を除いて大広間にいるサンタシの兵を一掃することは決して不可能なことではないこともわかっていた。
「ルシファー王を捕らえよ! 城を占拠するのだ」
ブラントミュラー公爵の指示で、貴族達を人質にとっているサンタシの兵が剣を構え玉座を取り囲んだ。
アザエルは今すぐにでも魔力を発動させようと手を構えた。
「アザエル、これしきのことでわたしがくたばるとでも? あの子はまだ力の制御がうまくできぬ・・・。あの子を止められるのはお前だけだ、行け」
「はっ」
王直々の命に、アザエルが従わぬことなどできる筈もなかった。
アザエルの手から放たれた威嚇の為の鋭い無数の水針。空気中に含まれる僅かな水分を瞬時に変換させたもので、殺傷力には些か劣る。
しかし、取り囲む兵に一瞬の隙を与えるには十分の代物だった。兵達が若干怯んだ隙に、アザエルは風のように素早く、クロウのと間諜の後を追った。
なんとしてもクロウに追いつき、最悪の事態を避けさせねばならなかった。
「動くな!」
何者かの腕が、クロウの首を絡めとりその身体が傾いたことに気付き、アザエルはぴたりとその手を止める。クロウの首にはすでに剣先が宛がわれており、その切っ先が僅かに喰い込み血を垂れ流していた。
クロウに切っ先を向けていたのは、なんとゴーディアの近衛兵の一人だった。つまりはサンタシの間諜ということになる。
そんな状況にも関わらず、クロウはなんの表情も浮かべないまま、ただじっと父とその側近を見つめていた。
魔王ルシファーは毒による痺れで魔力を発動できないない状態にあった。これはが普通の人間であるならば、今頃はとっくに死に絶えていたものである。
首に刃を据え付けられたまま、クロウは引きずられるようにして広間を連れ出されていく。
すぐ後を追わなければならないことはアザエルにも分かってはいたが、忠誠を誓った王の傍を離れることはさすがに憚られたし、アザエルの力をもってすれば、一部のやり手の者を除いて大広間にいるサンタシの兵を一掃することは決して不可能なことではないこともわかっていた。
「ルシファー王を捕らえよ! 城を占拠するのだ」
ブラントミュラー公爵の指示で、貴族達を人質にとっているサンタシの兵が剣を構え玉座を取り囲んだ。
アザエルは今すぐにでも魔力を発動させようと手を構えた。
「アザエル、これしきのことでわたしがくたばるとでも? あの子はまだ力の制御がうまくできぬ・・・。あの子を止められるのはお前だけだ、行け」
「はっ」
王直々の命に、アザエルが従わぬことなどできる筈もなかった。
アザエルの手から放たれた威嚇の為の鋭い無数の水針。空気中に含まれる僅かな水分を瞬時に変換させたもので、殺傷力には些か劣る。
しかし、取り囲む兵に一瞬の隙を与えるには十分の代物だった。兵達が若干怯んだ隙に、アザエルは風のように素早く、クロウのと間諜の後を追った。
なんとしてもクロウに追いつき、最悪の事態を避けさせねばならなかった。