AKANE
 ベリアルに一礼すると、アザエルは少年の身体を大切そうに腕に抱き、静かに地下へと向かった。
 見開いたままのクロウの目蓋に美しい手をやり、閉じさせた後、黒く美しい彫刻の施された棺の中に王子の身体を丁寧に横たえた。
「しばしお眠りください。せめて、僅かな眠りの間だけは貴方の魂に平穏が訪れますよう・・・」
 そう呟いた魔王の側近はゆっくりと棺の蓋を閉じていった。



(なに・・・、あれはクロウの記憶・・・?)
 再び訪れた暗闇の中で、朱音は目を数回ごしごしと擦(こす)りつけた。
 また視界の端にきらりと光るもの。
 朱音は思わず振り返る。
「今度は何?」
 光にじっと目を凝らすと、何やら楽しそうな声が響いてくる。



 聞き覚えのある声。
 あれは、朱音自身の声だった。
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