AKANE
くっと唇を引き上げると、ディートハルトはアザエルの間に合わせの剣に視線をやる。
接触の際に火花の飛び散る程の斬撃に、僅か数回の攻撃を受け止めただけのアザエルの剣の刃は既にあちこちが刃こぼれし、使い物にならない程になっていた。
冷たい目で一瞥すると、アザエルは流れるような動きで空いた手で別の攻撃を加えていく。
掌から発射される無数の針はディートハルトに絶え間無く襲い掛かる。
しかし、湿気の少ないこの室内では、空気中の水分は十分に殺傷力のある水針へと形を変えるには至らない。
ディートハルトはそうしたアザエルの攻撃を斬撃で弾き飛ばし、僅かなかすり傷のみという偉業を成し遂げていた。
アザエルの剣はゴーディアを出立前にどうやら元老院に奪われてしまったらしい。あり合わせの剣ではディートハルトの剣に所詮敵う筈などない。アザエルの剣が折れるのはもう時間の問題と言えた。
「どうした、魔族よ。お前の実力はそんなものか? 老いぼれを落胆させるな」
「口の減らぬ死に損ないが・・・」
魔力を使用し、これ程のディートハルトの攻撃を受け流しながらも、息一つ乱さないアザエルの姿に、朱音はやはりこの男は魔王ルシファーの右腕だったのだと実感する他無かった。
音もなく流れる水のように動く碧髪の男の姿は、異様に怪しい光を放っていた。
近衛兵でさえ二人の緊迫した闘いの様に見惚れ、そしてその場にまるで打ち付けられたように足が動かない。
『ザンッ』
瞬時に紅い飛沫が宙を舞い、近衛兵の一人が声を出す間もなくドサリとその場に倒れ込んだ。
そのすぐ傍で、返り血を浴びた氷の目をした男が、美しい顔からぽたりぽたりと鮮血を垂れ流しながらサンタシ最強の剣士を見つめる。
接触の際に火花の飛び散る程の斬撃に、僅か数回の攻撃を受け止めただけのアザエルの剣の刃は既にあちこちが刃こぼれし、使い物にならない程になっていた。
冷たい目で一瞥すると、アザエルは流れるような動きで空いた手で別の攻撃を加えていく。
掌から発射される無数の針はディートハルトに絶え間無く襲い掛かる。
しかし、湿気の少ないこの室内では、空気中の水分は十分に殺傷力のある水針へと形を変えるには至らない。
ディートハルトはそうしたアザエルの攻撃を斬撃で弾き飛ばし、僅かなかすり傷のみという偉業を成し遂げていた。
アザエルの剣はゴーディアを出立前にどうやら元老院に奪われてしまったらしい。あり合わせの剣ではディートハルトの剣に所詮敵う筈などない。アザエルの剣が折れるのはもう時間の問題と言えた。
「どうした、魔族よ。お前の実力はそんなものか? 老いぼれを落胆させるな」
「口の減らぬ死に損ないが・・・」
魔力を使用し、これ程のディートハルトの攻撃を受け流しながらも、息一つ乱さないアザエルの姿に、朱音はやはりこの男は魔王ルシファーの右腕だったのだと実感する他無かった。
音もなく流れる水のように動く碧髪の男の姿は、異様に怪しい光を放っていた。
近衛兵でさえ二人の緊迫した闘いの様に見惚れ、そしてその場にまるで打ち付けられたように足が動かない。
『ザンッ』
瞬時に紅い飛沫が宙を舞い、近衛兵の一人が声を出す間もなくドサリとその場に倒れ込んだ。
そのすぐ傍で、返り血を浴びた氷の目をした男が、美しい顔からぽたりぽたりと鮮血を垂れ流しながらサンタシ最強の剣士を見つめる。