AKANE
そして、息子であるクロウと過ごす時間もそう長くはとれていなかった。
しかし、父はクロウにとって偉大であった。強く、優しく、そして誰よりも温情深い国王だと・・・。
「化け物・・・」
恐怖に慄いた可憐で美しい王妃のぷくりとした可愛らしい唇から残酷な言葉たちが次々と紡ぎだされる。
「お前はなんて醜い生き物なの・・・! ああ、恐ろしい・・・!」
心が粉々に砕け散るのは十分すぎる言葉であった。
完全な拒絶。
クロウは泣いていた。
「母上、僕は・・・、僕は・・・」
「大丈夫ですかな? ひどい顔色をしていますぞ」
ディートハルトが頭上から朱音に声を掛けた。
あれから、二人はすぐに白亜城を出立し、ディアーゼを目指して最高速の馬で駆けているところであった。
思えば、何日も疲労による気絶と駆け足を繰り返しながら、這い出るように地下道を脱出してからというもの、朱音の記憶はひどく曖昧になっていた。
ときおり白昼夢を見ることも多くなり、そこで見た記憶は朱音自身の記憶、即ち、真咲や父や母、ただの中学生だった頃の記憶と同じ位鮮明になりつつある。それと同時に、時折ひどくルシファー王を懐かしく思うことや、義母ベリアルを思い出しては胸がジクリと痛むことも多くなった。
何より、死んだかもしれないとばかり思っていたアザエルが、生きて目の前に現れたことに、ひどく安堵している自分がいた。あれ程、朱音の全てを奪い去ったあの男を、吐き気がする程憎んでいたというのに・・・。
しかし、父はクロウにとって偉大であった。強く、優しく、そして誰よりも温情深い国王だと・・・。
「化け物・・・」
恐怖に慄いた可憐で美しい王妃のぷくりとした可愛らしい唇から残酷な言葉たちが次々と紡ぎだされる。
「お前はなんて醜い生き物なの・・・! ああ、恐ろしい・・・!」
心が粉々に砕け散るのは十分すぎる言葉であった。
完全な拒絶。
クロウは泣いていた。
「母上、僕は・・・、僕は・・・」
「大丈夫ですかな? ひどい顔色をしていますぞ」
ディートハルトが頭上から朱音に声を掛けた。
あれから、二人はすぐに白亜城を出立し、ディアーゼを目指して最高速の馬で駆けているところであった。
思えば、何日も疲労による気絶と駆け足を繰り返しながら、這い出るように地下道を脱出してからというもの、朱音の記憶はひどく曖昧になっていた。
ときおり白昼夢を見ることも多くなり、そこで見た記憶は朱音自身の記憶、即ち、真咲や父や母、ただの中学生だった頃の記憶と同じ位鮮明になりつつある。それと同時に、時折ひどくルシファー王を懐かしく思うことや、義母ベリアルを思い出しては胸がジクリと痛むことも多くなった。
何より、死んだかもしれないとばかり思っていたアザエルが、生きて目の前に現れたことに、ひどく安堵している自分がいた。あれ程、朱音の全てを奪い去ったあの男を、吐き気がする程憎んでいたというのに・・・。