AKANE
「ディアーゼの街は火と血の海と化すやもしれぬ・・・」
「では陛下、わたしは直ぐにフェルデン殿下の元へと向かいます」
ディートハルトは一礼すると、早足で国王の前から立ち去っていく。彼はディアーゼへいち早く馬を飛ばし、フェルデンの指揮する騎士団に一刻も早く合流しなければならなくなった。
「待ってください・・・! わたしも一緒に行きます・・・!」
気付いたときには、朱音はディートハルトに向けて声を発していた。
ぎょっとした表情を浮かべたディートハルトであったが、顔面のケロイドの傷をくしゃりと歪めて彼は小さく頷いた。
「ヴィクトル陛下、確かにそれは良い案やもしませんぞ。ゴーディアの国王が一緒ならば、敵国の侵攻軍にうまく働きかけることができる」
正直なところ、ヴィクトル王はこの少年王を信用し兼ねていた。今は純粋で穏やかな王を演じてはいるが、いつ突如手の平をひっくり返し、本性を現すかしれない。
しかし、もし少年王が言うように、本当に彼が居ぬ間にゴーディアの国王に成り代わろうとする者が存在し、裏で糸を引いているならば、この少年王の存在は戦場となるディアーゼにおいて強力な手札となる。
これは一種の大きな賭けでもあった。
もしディアーゼで少年王が裏切りを犯したならば、その時はおそらくサンタシの最後となるだろう。
「わたしは魔族の王の言葉など信用できぬ」
朱音は懸命にサンタシの王ヴィクトルに訴えかけた。
「お願いです、命を賭けてもいいです。絶対にわたしは貴方を裏切ったりしません! フェルデンを・・・彼を助けたいんです・・・!」
ヴィクトル王は、怪訝に思った。どうしてこの少年王は、よく知りもしない敵国の王子などにこんなにも一生懸命になるのかと。
フェルデンが打ち明けた、アカネを殺された怒りでこの少年王の首を絞めたという実弟の過ちだけが、ヴィクトル王の脳裏に思い当たった。
しかし、それは少年王が怒りを抱くことは考えられても、フェルデンの安否を気にすることの理由にはならないようにも思えた。
「では陛下、わたしは直ぐにフェルデン殿下の元へと向かいます」
ディートハルトは一礼すると、早足で国王の前から立ち去っていく。彼はディアーゼへいち早く馬を飛ばし、フェルデンの指揮する騎士団に一刻も早く合流しなければならなくなった。
「待ってください・・・! わたしも一緒に行きます・・・!」
気付いたときには、朱音はディートハルトに向けて声を発していた。
ぎょっとした表情を浮かべたディートハルトであったが、顔面のケロイドの傷をくしゃりと歪めて彼は小さく頷いた。
「ヴィクトル陛下、確かにそれは良い案やもしませんぞ。ゴーディアの国王が一緒ならば、敵国の侵攻軍にうまく働きかけることができる」
正直なところ、ヴィクトル王はこの少年王を信用し兼ねていた。今は純粋で穏やかな王を演じてはいるが、いつ突如手の平をひっくり返し、本性を現すかしれない。
しかし、もし少年王が言うように、本当に彼が居ぬ間にゴーディアの国王に成り代わろうとする者が存在し、裏で糸を引いているならば、この少年王の存在は戦場となるディアーゼにおいて強力な手札となる。
これは一種の大きな賭けでもあった。
もしディアーゼで少年王が裏切りを犯したならば、その時はおそらくサンタシの最後となるだろう。
「わたしは魔族の王の言葉など信用できぬ」
朱音は懸命にサンタシの王ヴィクトルに訴えかけた。
「お願いです、命を賭けてもいいです。絶対にわたしは貴方を裏切ったりしません! フェルデンを・・・彼を助けたいんです・・・!」
ヴィクトル王は、怪訝に思った。どうしてこの少年王は、よく知りもしない敵国の王子などにこんなにも一生懸命になるのかと。
フェルデンが打ち明けた、アカネを殺された怒りでこの少年王の首を絞めたという実弟の過ちだけが、ヴィクトル王の脳裏に思い当たった。
しかし、それは少年王が怒りを抱くことは考えられても、フェルデンの安否を気にすることの理由にはならないようにも思えた。