AKANE
明らかに他の騎士よりも目立つ身なりの騎士は、この慌しい戦場にも関わらず、何の焦りも感じていないようであある。
「あいつか・・・!」
フェルデンはそう直感で感じると、すぐさま馬の手綱をとり愛馬を走らせる。
しかしまだそこへ追いつくには少し距離があった。
男が石壁が崩れ落ちた瓦礫を通りすぎ、張り巡らされた結界の前に立ち塞がった。歩兵や騎士達が結界から僅かに離れたかと思った瞬間、男は持っていた槍をまるで紙の棒でも振るように軽々と一振りすると、あれだけびくともしなかった結界にその斬撃で切れ目が走った。
「!!」
何事も無かったかのように、その切れ目から馬で歩を進めようとする男の背後から、フェルデンは叫んだ。
「待て! そこは通す訳にはいかない! 見たところ、貴殿はゴーディア軍の大将とお見受けする!」
振り返った男の目と見て、フェルデンは驚き言葉を失った。
彼は盲目だった。紫紺の美しい瞳は、開いてはいるものの、既に光を失い周囲の何も映し出してはいなかったのだ。
しかし、彼の甲にははっきりと黒翼が焼き付けられている。
「如何にも・・・。だが悪いが、おれはこの通り目が見えん。そちらは何者だ」
ひどく落ち着いた盲目の騎士の声に、フェルデン自身も落ち着いた口調で返答した。
「おれはサンタシ騎士団指令官、フェルデン・フォン・ヴォルティーユ。ヴィクトル・フォン・ヴォルティーユ陛下の実弟だ」
あれ程騒がしかったというのに、なぜかこの周囲だけはいつになくしんとしている。
「おれはゴーディア国、黒の騎士団指令官補佐役、ライシェル・ギーだ。確かにおれはこの戦場において“大将”とも言えるが・・・。もう一人同格の仲間がいた筈なのだが・・・」
「あいつか・・・!」
フェルデンはそう直感で感じると、すぐさま馬の手綱をとり愛馬を走らせる。
しかしまだそこへ追いつくには少し距離があった。
男が石壁が崩れ落ちた瓦礫を通りすぎ、張り巡らされた結界の前に立ち塞がった。歩兵や騎士達が結界から僅かに離れたかと思った瞬間、男は持っていた槍をまるで紙の棒でも振るように軽々と一振りすると、あれだけびくともしなかった結界にその斬撃で切れ目が走った。
「!!」
何事も無かったかのように、その切れ目から馬で歩を進めようとする男の背後から、フェルデンは叫んだ。
「待て! そこは通す訳にはいかない! 見たところ、貴殿はゴーディア軍の大将とお見受けする!」
振り返った男の目と見て、フェルデンは驚き言葉を失った。
彼は盲目だった。紫紺の美しい瞳は、開いてはいるものの、既に光を失い周囲の何も映し出してはいなかったのだ。
しかし、彼の甲にははっきりと黒翼が焼き付けられている。
「如何にも・・・。だが悪いが、おれはこの通り目が見えん。そちらは何者だ」
ひどく落ち着いた盲目の騎士の声に、フェルデン自身も落ち着いた口調で返答した。
「おれはサンタシ騎士団指令官、フェルデン・フォン・ヴォルティーユ。ヴィクトル・フォン・ヴォルティーユ陛下の実弟だ」
あれ程騒がしかったというのに、なぜかこの周囲だけはいつになくしんとしている。
「おれはゴーディア国、黒の騎士団指令官補佐役、ライシェル・ギーだ。確かにおれはこの戦場において“大将”とも言えるが・・・。もう一人同格の仲間がいた筈なのだが・・・」